第7回(2022)週刊ダイヤモンド2023年2月18日号記事広告

~大学生による会計学のゼミナール研究発表大会~
「第7回アカウンティングコンペティション」が開催

大学生による会計学のゼミナール研究発表大会「アカウンティングコンペティション」(以下、アカコン)、その第7回大会が2022年12月、東京・世田谷区の日本大学商学部砧キャンパスで開催され、全国の24大学から75チームが参加した。今回はコロナ禍を経て3年ぶりの会場での開催と同時に、初の試みとして、オンラインとオフラインを併用するハイブリッド方式での開催となり、各チームによる工夫を凝らしたプレゼンテーションが披露された。コロナ禍を経て学生たちが得た学びは、いったいどのようなものだろうか。

会計とは、経済活動を描写し写像するための手段である
「会計は、企業等の経済活動を簿記等のルールに基づいて記帳し、その過程や結果を財務諸表等にとりまとめる。従って、財務諸表等は、経済活動を計数的に描写した写像であり、経済社会における多くのステークホルダーに伝達され、多様な用途、目的に利用されることになる」。会計はこのように定義され、以来多くの関係者によって不断の研究と実践を重ねられてきた。
しかし、ここ数十年で、この社会は大きく変わった。経済のグローバル化、ICTの進化、SDGsやESG経営など社会がますます複雑化、そして不確実性がいっそう増す中で、経済・社会活動自体が一変し、そして「会計」に求められる役割も大きく変わった。とくに、2013年に発表されたフレイとオズボーンの論文では、「記帳」し「出力」するという会計の基本的な行為自体が、AI(人工知能)やRPA(ロボットによる業務自動化)により「不要」となりかねないほどの衝撃を与え、公認会計士試験をはじめとした国家試験、そして会計学を学修できる大学の受験者数にも影響を与えた。そのような中で発生した、世界的なパンデミック、新型コロナウイルス感染症であった。
この世界的なパンデミックは学生生活にも大きな影響を及ぼした。とくに2020年に入学した今年度3年生の学生にとっては、大学に入学した途端、大学は閉鎖され、キャンパスライフは入学当初からオンラインでの授業を要求された。研究生活はもちろんのこと、友達にリアルに会えない、サークル活動もリアルにできない生活はいかばかりなものだっただろうか。

多種多様なテーマをオンライン・オフラインで熱いプレゼンテーション!
アカコンもパンデミックに大きく影響を受けた。2016年に、大学における会計学教育を活性化させようと、大学生による会計学に関する研究発表大会として開催されたのが「第1回アカコン」。しかし、パンデミック下の2年間はオンラインでの開催となった。そして今年、3年ぶりに会場での開催に踏み切った。それと同時に、「オンライン(遠隔方式)とオフライン(会場での対面方式)を併用するハイブリッド方式での同時開催」という、新しい方式での開催に挑戦した。東京の会場に来ることができない遠方の学生にも等しくチャンスを与える。しかし、評価の基準は遠隔方式も対面方式も同じ。「機会は等しく公平に」、「すべてのプレイヤーを同一基準で測定する」という、まさに会計が目指す「理想の姿」といえよう。
当日の会場でまず驚いたことは、発表する各チームのテーマの多彩さだった。従来の財務会計・管理会計に忠実なテーマから、経営戦略、ファイナンスや労務管理、デザイン、さらには生物多様性といった、一見従来の会計学では扱われなかったと思われる分野まで、ありとあらゆるテーマが並んでいた。しかし、プレゼンテーションを聞いて、どのようなテーマも「会計」につなが ることを感じた。
そして、会計学とは「説明の学問」であるのと同時に、「表現の学問」であることも実感した。そもそも英語の「account」とは「説明する」という意味を持つが、「説明力」は多分に「表現力」に依存する。とくに近年「非財務情報」に関する研究が大きく進んでいることを感じた。従来、企業が取引先や投資家・債権者などに開示する情報は、有価証券報告書に含まれる定量的な財務情報が中心だった。しかし近年、CSR(企業の社会的責任)報告書や統合報告書、サステナビリティレポート等、様々な手段が出現する中で、読み手となるステークホルダーも、ますます対象が増えていった。
これら様々なステークホルダーに対して、企業は「財務情報」と「非財務情報」それぞれの特徴を生かしたうえで「経営の実態」と「企業の意思」を公表する。一方でステークホルダーは、企業等からの公開情報から、その企業の「実態と意思」を読み取り、投資等の行動につなげる。とりわけ直接金融が重視される昨今、無数の投資家になるべくわかりやすい情報を提供する必要がある。定量情報のみでは企業の実態や意思を十分伝えきれないものを定性情報と合わせて説明することが求められるが、一方で、非財務情報は、メッセージ、伝え方、果ては冊子のデザインや色調によって、その読み手に与える印象が変わり、意図しない結果を招く可能性もある。その意味で、「財務情報」と「非財務情報」が両輪となって企業や主体の経済活動の実態をいかに表現するかを追求することと同時に、情報提供する側のみならず、情報を受ける側の「会計リテラシー」を高めることも、経済社会の健全な発展にとって重要なことだといえよう。

「表現し発信する会計」へ~デジタルネイティブ人財が生み出す新たな会計の姿
第7回アカコンの学術的研究分野は、最優秀賞は日本大学商学部「ゴートなトリオ」、優秀賞は文京学院大学経営学部高橋ゼミ平山未結さんが、実践的研究分野は、最優秀賞は青山学院大学経営学部「SKP」、優秀賞は日本大学商学部「tipsy」が受賞した。「ゴードなトリオ」、高橋ゼミ平山さんはそれぞれ倒産回避や不正会計の検知をテーマに、実証面・理論面から調査・研究した内容であった。一方で「SKP」は統合報告書と有価証券報告書のリスク情報開示の違い、「tipsy」は経理部門におけるRPAの有用性の研究をテーマに考察・発表したものであった。
これら4チームのみならず、全てのチームに言えることは、今の経済社会が抱える問題をフレッシュな眼で冷静に見ていること、それらを「会計」という共通の土台を使って捉えようとしていることだった。そして、その情報収集・研究・プレゼンテーション能力すべてが進んでいることにも感心させられた。これまでの「写像」は、与えられたものを財務的に表すのみだったが、これからは、財務・非財務双方の手段を駆使して、いかに「適切に・公正に表現するか」の能力が問われてくる。彼らは生まれた時からインターネットが身近にある、デジタルネイティブ世代である。AIやRPA、オンラインツールを使いこなし、本当の「会計の仕事」を行う。世界的なパンデミックを経てそのような会計人財が確実に育ちつつある、そう感じた第7回アカコンであった。
準備委員長の日本大学商学部教授の川野克典氏は言う。「会計には未来がある」、そして「日本の経済社会はもっと面白くなる」。

出場大学(50音順)
青山学院大学、京都産業大学、近畿大学、國學院大學、国士舘大学、成城大学、専修大学、千葉商科大学、中央大学、中京大学、東京大学、東京経済大学、東京都立大学、東京理科大学、日本大学、福島大学、文京学院大学、名桜大学、明治大学、明星大学、横浜市立大学、立教大学、立正大学、立命館大学

協賛・後援
PwCあらた有限責任監査法人、 有限責任 あずさ監査法人、 有限責任監査法人トーマツ、 EY新日本有限責任監査法人、株式会社プロネクサス、 株式会社アバント、 Ascent Business Consulting株式会社、株式会社中央経済社、株式会社東京証券取引所 (日本取引所グループ)、太陽有限責任監査法人、学校法人大原学園、日本公認会計士協会、 日本商工会議所

問い合わせ先:アカウンティングコンペティンション準備委員会